にごり池にコーイチ
「にごり池」が近くにある。
急な丘を登って、ささやかな林を分け入ったところに池はある。
人が寄り付かない事を知っていたので、ぼくはたまに行く。
釣竿を持っていくでもなく、ただ水面を眺めるために。
その池はピタリと呼吸を止めていた。
見ていると呼吸が止まる時がある。
その瞬間がたまらなく好きだった。
水面で何かが動き、波紋を描くこともなかった。
何も住んでいない池、死んでいる。
そう思うと胸がキュっとした。
2学期から違う学校に通うことになった夏休み。
引越しの準備をしていて、ぼくは胸に抱きしめて走った。
丘を駆け上がり林を抜けて。
ぼくは水槽をぶち撒いた。
さらばだ、出目金、コーイチ。
さらばだ。
2007
05
22