トイレットペーパー
トイレットペーパーが部屋の中をコロコロと転がっていて、紙が縦横無尽に跡を残していく。
重なって、こんがらがって、その上をトイレットペーパーはさらに転がっていく。
どこかを目指しているわけでもなく、床の隙間を埋める。
やがて芯だけになる。それでも転がる。
芯だけがコロコロとトイレットペーパーの床を転がり続ける。
その部屋にはもうトイレットペーパーの芯しかいないので、トイレットペーパーの芯は誰に止められるでもなく、好きなだけ転がり続け、続けている。
そんな事態をわたしはふいに見かけることになる。
ビルは8階建てで、わたしはその屋上から見える景色はどんなだろうと、ふいに思ってしまったのだ。
エレベーターは故障していたし、人の住んでいる気配のない、廊下の片隅に雑草が茂り始めているようなビルだった。
誰も手入れをしていない。
わたしは非常階段に続く扉を開いた。
さぁっと見たことのない虫みたいなものたちが、影に隠れていく。
階段には薄い緑色をしたカビみたいなものがミッシリと生えていて、わたしは右足でそれらを踏み潰しながら上り始めた。
靴底から伝わる、小さなものを踏み潰していく感触にドキドキしながら、わたしはゆっくりと屋上に続く扉を開き、それから8年の時が流れた。わたしは見知らぬ土地を訪れたり、誰も知らなかった大きな獣に襲われたり、よくわからない部族に喰われそうになりながらもなんとかやり過ごしてようやく、転がり続けるトイレットペーパーの芯と出会うのだが、その話はここでは記さない。
誰に止められるでもなく、好きなだけ転がり続けるトイレットペーパーの芯をわたしは、そっとしておいてやりたかった。
2008
07
05